世界農業遺産「みなべ・田辺の梅システム」に関する Q&A

Q.1世界農業遺産(GIAHS:ジアス)とは何ですか?

A.国連の専門機関が認定する、伝統的な農業の営み・暮らしです。

【補足説明】

 社会や環境の変化に適応しながら、何代にもわたって地域に受け継がれてきた伝統的な農業の方法で、農業を続けることで農村の文化や風景、生き物を守り続けてきたものとして、国連の専門機関(国連食糧農業機関)により認定されたものをいいます。

 英語で Globally:世界的に、Important:重要な、Agricultural:農業の、Heritage:遺産、Systems:システムの頭文字をとって GIAHS(ジアス)と呼ばれています。

 ここでいう農業は、林業・水産業も含みます。

Q.2世界農業遺産の目的は何ですか?

A.世界各地の伝統的な農業の営み・暮らしを、次世代に受け継いでいくことです。

【補足説明】

 世界中で、大型機械を使うなどの効率性を重視した農業が進められる中、失われつつある伝統的な農業の方法と、それに関連する農村の文化や風景、生物多様性を守り、次世代に受け継いでいくために、優れた事例を認定する制度として創設されました。

Q.3どこが認定するのですか?

A.国際連合食糧農業機関(FAO)という、国連の専門機関が認定します。

【補足説明】

世界の農林水産業の発展と農村開発に取り組む国連の専門機関です。

Q.4ネスコの世界遺産とは違うものですか?

A.認定・登録する対象と、機関が違います。

【補足説明】

 世界農業遺産は、社会や環境の変化に適応しながら受け継がれてきた地域の農業の営み・暮らしを認定するものです。一方、ユネスコの世界遺産は、人類全体に共通する価値を持つ、記念物、建造物群、遺跡といった文化遺産及び自然遺産を登録し、保護するものです。
 また、世界農業遺産を認定するのは国連食糧農業機関(FAO)という機関であり、世界文化遺産・自然遺産を登録する国際連合教育科学文化機関(UNESCO:ユネスコ)とは異なる機関です。

Q.5現在、世界また日本国内では何地域が認定されていますか?

A.世界では 16 ヶ国 37 地域、日本では 8 地域が認定されています。
(2017年5月現在)

【補足説明】

日本の認定地域(認定年)

  • ① 新潟(佐渡)「トキと共生する佐渡の里山」(2011)
  • ② 石川「能登の里山里海」(2011)
  • ③ 静岡「静岡の茶草場農法」(2013)
  • ④ 熊本「阿蘇の草原の維持と持続的農業」(2013)
  • ⑤ 大分「クヌギ林とため池がつなぐ国東半島・宇佐の農林水産循環」(2013)
  • ⑥ 岐阜「清流長良川の鮎」(2015)
  • ⑦ 宮崎「高千穂郷・椎葉山の山間地農林業複合システム」(2015)
  • ⑧ 和歌山「みなべ・田辺の梅システム」(2015)
Q.6みなべ・田辺の梅システムとは何ですか?

A.みなべ・田辺地域で受け継がれてきた、梅を中心とした農業の営み・暮らしです。

【補足説明】

特長① 山全体を梅林にせず、炭焼きのための薪炭林(山)を周辺に残している

 薪炭林は、雨水が地中に貯め斜面の崩落を防ぐだけでなく、地中の水が養分を蓄えるため、農業や生物多様性に貢献しています。
 また、薪炭林のウバメガシでつくられる「紀州備長炭」は日本の炭のトップブランドとしての地位を築いています。

特長② ミツバチによる受粉を行っている

みなべ・田辺地域で栽培している梅の多くは、違う品種の花粉がめしべにつかないと実がなりません。そのため、違う品種の梅の木を近くに植え、ミツバチによる受粉を行っています。花の少ない早春に咲く梅の花は、ミツバチにとっても貴重な食糧となっています。

Q.7みなべ・田辺地域はどのような地域ですか?

A.和歌山県にある日本一の梅の産地で、紀州備長炭の産地でもあります。

【補足説明】

 みなべ・田辺地域は紀伊半島南西部に位置し、和歌山県みなべ町と田辺市に広 がる地域です。地域に住み、働く人の 70%は何らかの形で梅に関わっており、梅の花が咲く時期には毎年 5 万人前後の観光客が訪れます。紀州備長炭は最高級の燃料として高く評価されています。みなべ・田辺地域の梅栽培は江戸時代に始まり、備長炭の製造はそれ以前から、少なくとも 400 年以上にわたり受け継がれてきました。

Q.8どのような梅栽培をされているのですか?

A.耕作に不利な傾斜地を活かした栽培方法や安定した梅が生産できるような剪定、ミツバチを活用した受粉などが行われています。

【補足説明】

 梅林の下に設置したネットで熟して落下する実を受けとめ、傾斜を活用して集める独特の収穫方法で、作業を省力化しています。

傾斜地の梅林には、草を生やすことで土の保水力を高め、刈った草を肥料として利用しています。

Q.9南高梅はどのように誕生したのですか?南高梅だけ栽培しているのですか?

A.地域一体となって調査研究を行い、風土に合った梅の品種を選びました。
南高梅以外にも、古城、小梅などの品種も栽培しています。

【補足説明】

 地域の風土に適した梅の品種を見つけて安定的に生産を行うため、選定委員会が中心となって5年にわたる調査を行い、最良品種として選ばれたのが「高田梅」でした。調査研究に協力した南部高校園芸科の生徒たちの功績を評価して「南高梅」と名付けられました。果肉が多く、皮が薄いという特徴があり、この地域で栽培されている梅の約8割にのぼります。

Q.10梅農家と加工事業者との関係はどのようなものですか?

A.農家が梅を白干梅(一次加工)を作り、それを加工事業者が購入し、加工して販売します。

【補足説明】

 農家が、収穫した梅の塩漬け、天日干し(白干し)を行っているため、南高梅は栽培の段階から良質の梅干しになるように育てられます。加工業者は、農家がつくった白干し梅を加工(減塩・味付け)して販売します。加工事業者も、南高梅の魅力や特徴を熟知しており、この農家と加工事業者との密接な連携により、高品質な南高梅が生まれます。

Q.11薪炭林(山)と梅との関係は何ですか?

A.薪炭林(山)を全て梅林にせずに残し、管理することで、梅の栽培が続けられます。

【補足説明】

 周辺に残された薪炭林は適切に管理されることで、雨水が地中に貯まり、斜面の崩落を防ぎ、梅栽培を支えています。また薪炭林は、梅の受粉に重要な役割を果たすミツバチの活動場所となっています。

Q.12ニホンミツバチだけ利用しているのですか?

A.セイヨウミツバチも利用しています。

【補足説明】

 梅の受粉は、かつてはニホンミツバチだけで行っていましたが、現在では、セイヨウミツバチも利用しています。環境の変化に適応しながら、伝統的な農法を受け継いできました。
 また、ミツバチなどの主要な送粉昆虫による受粉の他、メジロやウグイスなどの鳥類も梅の花を訪れています。

Q.13絶滅危惧種をはじめ、多くの動植物が生育・生息しています。

A.

【補足説明】

 植物では、オンツツジやササユリ、キイセンニンソウなど里山を代表する植物が生育しています。また、「紀州備長炭」の原木として有名なウバメガシの他に、木炭の原木のカシ類、ネジキ、カナメモチなどが生育しています。水生生物では、サンショウウオやアカハライモリ、鳥類ではハイタカ、オオタカ、クマタカなどの絶滅危惧種も確認されています。
 薪炭林を残し、自然の地形などを活かした農業を続けてきた結果、動植物の生育・生息環境が提供され、生物多様性が維持されています。

Q.14山の管理は誰がしているのですか?また、どのように管理しているのですか?

A.製炭業者により「択伐」という管理が行われてきました。

【補足説明】

 「紀州備長炭」の原木を生産し続けるため、炭に適する太さの木や、原木のウバメガシの成長を妨げる木だけを伐採する「択伐」という管理技術が考えられ、製炭業者や製炭業者の団体などに受け継がれています。

Q.15梅、備長炭以外の特産品は何ですか?栽培されていますか?

A.梅と併せて、多くの農産物が栽培されています。

【補足説明】

 米、キャベツやブロッコリーの露地栽培、イチゴやエンドウ、トマトのハウス栽培のほかに、温州みかんなどのかんきつ類の栽培も行われています。

Q.16世界農業遺産「みなべ・田辺の梅システム」をどこで観ることができますか?

A.道の駅みなべうめ振興館、紀州備長炭振興館、紀州備長炭記念公園などで観て、知ることができます。また、2 月になると南部梅林、岩代大梅林、紀州田辺石神梅林でその景観を楽しむことができます。

【補足説明】

 梅の花の時期には、農家は園内を自由に散策できるように梅林を解放して、観梅客を迎えています。